耳鳴り
実際は音がしていないのにも関わらず、耳の奥のほうでキーンと何かが鳴っているように感じられる状態、それが耳鳴りです。飛行機やエレベーターに乗っているときなどに一時的に起こることもありますが、中耳炎や突発性難聴、メニエール病などの耳鼻咽喉科の病気や、高血圧や糖尿病、脳梗塞、脳腫瘍などが原因となっていることもあります。耳鳴りがいつまでも続くときは、耳鼻咽喉科で診てもらうようにしましょう。
原因が分からない耳鳴りや高血圧、自律神経失調症、更年期障害などの随伴症状として起こっている耳鳴りに漢方薬が有用なことがあります。高血圧や糖尿病などではメインの病気を西洋薬でしっかり治し、耳鳴りなどの随伴症状を漢方薬で和らげていくという方法がとられることもあります。
耳鳴りと中医学
漢方の考え方には「気・血・水(き・けつ・すい)」というものがあり、耳鳴りは水分のバランスが悪い状態、つまり水の異常(水毒・水滞)によって起こると考えられています。そこで水の異常を整える漢方薬が処方されることが多いようです。
■ 強い精神的ストレスが原因の耳鳴り 漢方では、肝が自律神経のバランスを司っています。過度なストレスによって肝の機能が異常になると自律神経のバランスが崩れ、肝の通り道である肝経絡にもトラブルが生じます。
耳の周りには肝の経絡が多く通るため、ストレスなどによって経絡の流れも阻害され、その結果耳鳴りとして現れたりするのですね。
このタイプはストレスを抱え込みやすい人に多く見られます。現代人に増えているケースともいえるでしょう。
聴力が急激に低下したり、気分によって耳鳴りが出たり出なかったり、高く大きい音の耳鳴りが多い、耳鳴り以外の症状としては、ゆううつ、怒りっぽい、便秘と下痢を繰り返す、わき腹が張る、目が充血しやすいなどがあげられます。
代表薬としては、肝の流れをよくする抑肝散(よくかんさん)や釣藤散(ちょうとうさん)がありますが、このタイプはどうすればストレスをためないですむか、ストレスの根本を経つことが先決でしょうね。
■ 水分代謝異常が原因の耳鳴り 水分代謝が悪くなる原因には、もともと胃腸の働きが悪かったり、飲食の不摂生などがあります。
どちらにせよ、腸が水分をうまく吸収できなくなり、水分代謝が悪化すると、その余計な水分が全身に滞り、耳の働きにも異常が出やすくなるのです。
日本人には水分代謝の悪い方が多く、このタイプはわたしたち日本人にもっとも多いタイプといえるでしょう。
おもな症状としては、梅雨時や台風が近づくと耳鳴りが悪化する、セミが鳴くのような耳鳴り、耳が詰まったような感じ、疲れると耳鳴りが悪化する、食欲がない、めまい、痰が多いなど。
お酒の飲みすぎなどで、体内に余計な湿熱がある場合は竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)、普段から食欲不振だったり、めまいや頭痛があるような場合は半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)などが適用されます。
漢方薬と同時に食生活の見直しも重要で、脂っこいもの、甘いもの、辛いものを食べ過ぎないようしましょう。休肝日もあるといいですね。
■ 腎機能低下が原因の耳鳴り もともと虚弱体質だったり、過労や精神的ストレス、加齢などによって腎機能の働きが低下して耳鳴りになるタイプです。年をかさねた人に多いパターン。
具体的な症状としては、小さなセミが遠くで鳴くような耳鳴り、音は小さく低い、静かになると耳鳴りが気になる、過労によって耳鳴りが悪化する、腰やひさが痛い、手足がほてる、めまいがするなどがあげられます。
仕事のしすぎやストレスで悪化するので、ゆっくりと休息をとるといいでしょう。代表的な漢方薬には、腎機能を強化する六味丸(ろくみがん)や、六味丸に柴胡(さいこ)と磁石(じせき)を加味した耳鳴丸(じめいがん)などがあります。 |