インポテンツ(ED)はどんな病気か
性交渉をするための十分な勃起が得られない場合や、勃起(ぼっき)を維持できないために性交ができない状態を指します。最近ではED(Erectile Dysfunction)と呼ばれています。日本では約500万人の患者さんがいると推測されています。
原因は何か
生まれつき、まったく勃起したことがない一次性のインポテンツと、一時的には可能であったがその後インポテンツになった二次性のインポテンツに分類されます。
一次性は、二次性徴が発現していない人にみられます。これに対し二次性のものは、20〜40歳では新婚インポテンツなどの精神、心因性(しんいんせい)のものが多いことが知られています。40歳以上では器質性、つまり加齢、慢性疾患(糖尿病、心臓病、動脈硬化、うつ病)、骨盤・膀胱や前立腺、直腸の外傷、手術などにより、勃起に関係する神経や血管が損なわれたことが原因です。
また、頭部・脊髄(せきずい)の病気や外傷によってもインポテンツになることがあります。そのほか、降圧剤、抗うつ薬、抗アンドロゲン薬を服用するとインポテンツになることがあります。
症状の現れ方
はじめは時々勃起しなくなるだけですが、重症になると常時このような状態になります。
検査と診断
過去4週間の性的行為での勃起の有無、硬度、挿入可能であったかどうか、維持可能であったかどうかについて問診します。早朝勃起の有無や頻度、その時の硬度も診断に有用です。一般に早朝勃起が普通にあれば、精神・心因性のインポテンツと考えられます。
新婚インポテンツは新婚旅行時などで見かけられますが、マスターベーションは可能で早朝勃起現象もあります。
また、マスターベーションは可能でも腟内では射精できない腟内射精困難症は、精神・心因性のインポテンツの亜型と考えられています。
そのほか、二次性徴の出現の有無、たとえば陰茎(いんけい)や精巣の大きさや男性ホルモンを含めた血液検査が必要になります。また、糖尿病などの慢性疾患がないかどうかのチェックも必要です。
さらに、飲酒歴、喫煙、うつ病などの有無、降圧薬などの内服歴を調べます。
特殊なものとしては、リジスキャンといって、睡眠中に勃起現象が起こっているかどうかを検査する方法があります。夜間に勃起しているようならば、心因性のインポテンツが疑われます。また、超音波で陰茎の血流を測定することや、陰茎に薬を注入して勃起を誘発する試験もあります。
治療の方法
一次性のインポテンツでは、二次性徴を発現させるために男性ホルモンなどの補充療法を行います。新婚インポテンツや腟内射精困難症などの精神・心因性のインポテンツでは、行動療法、心理療法があります。これで効果がなければクエン酸シルデナフィル(バイアグラ)を用いることになります。
器質性のインポテンツでは、その原因になっている基礎疾患(糖尿病、うつ病など)の治療が必要です。また、インポテンツを起こす可能性のある薬を中止することがすすめられます。しかし、効果のみられないことも多く、バイアグラがよく使われています。ただし、バイアグラの投与前に、心疾患などの合併症がないこと、硝酸剤(ニトログリセリンなど)を服用していないことを確認する必要があります。
バイアグラ以外の方法としては、陰茎に平滑筋弛緩薬(へいかつきんしかんやく)たとえばプロスタグランジンや塩酸パパベリンを自己注射する陰茎海綿体自己注射法、陰圧式勃起補助具を使う方法、陰茎内に手術的に補助具を挿入する方法があります。