出産時に注意深く扱われるものにへその緒と胎盤などの後産がある。これらは生まれた子の運命に影響を及ぼすと考えられ、慣習に従った処理がなされるが、しばしば生まれた子が女か男かによって処理の仕方が異なる。スーダンの遊牧民ハデンドワでは、女児の後産はテントの内部に埋められ、男児の後産はキャンプから遠く離れた木陰に埋められる。
バリ島では後産を女の子なら左側に、男の子の場合は家の入口の右側に埋める。モン人はへその緒を女なら寝台の脚の下、男の子なら家の戸口の下に埋める。サモアでは女の子のへその緒はタパ布の材料になる木の下に埋める。男の子のへその緒は海に投げたりタロイモの下に埋めた。出産後、生まれた子供に儀礼を施すこともよくなされる。メキシコのツォツィル語系マヤ人では女の子の場合はトウモロコシ、トウガラシ、塩、機織(はたお)り男、の子の場合は鍬(くわ)、斧(おの)、山刀の道具を赤ん坊の口に当てて唱え言をいう。
これらは男女出産の習俗の違いを世界観のなかで位置づけ、男女の役割を確認することを意味していると考えられる。なお、初乳を赤ん坊に飲ませないとか、赤ん坊が最初に飲む乳は母親以外の女性の乳でなければならないとする所がある。たとえばアフリカのサン人の部族クンでは赤ん坊がすぐ母親の乳を飲むと母子ともに死ぬと信じているので、最初は他人の女性の乳を飲ませる。