● 肝機能障害と中国漢方肝臓によいとされる生薬や健康食品は数多くある。 健康食品では、田七人参、霊芝、ウコン、しじみ、レバー製品など、生薬では柴胡、当帰、芍薬、香附子など、漢方処方では、小柴胡湯などが日本で良く知られている。 中国では菊花、板藍根、蟻、クコなども有名である。この他にも最近では、次々に新しい健康食品が登場している。その結果、消費者はどれが自分にあっているのか判断に迷うことになりかねない。 どんなに良いものでも、その人の体質や肝臓の疾患状態に合っていなければ、効果を発揮できない。そのためには、肝臓の生理機能や病理変化を知り、それに合った健康食品や生薬を選択する必要がある。
● 肝臓の生理と病理・・・身体の化学工場 東洋医学・中医学でいう肝には主に全身の気をめぐらせる働き(疏泄作用)がある。 この疏泄作用で、全身の気の運化を調節し、血液の流れをスムーズにする。 精神状態を安定させ、消化を助けているのも肝である。 肝は飲食物の消化を助ける胆汁を分泌、排泄し、消化吸収を促進する。 肝の疏泄機能が低下すると、気の運行異常・精神状態の低下のほか、ゲップ、腹が張る、食欲低下などの諸症状が現れる。 これは肝臓が身体の化学工場であり、バイオ化学機能を有する体内最大の分泌器官という現代医学の認識と大体一致している。 肝には身体にとって重要な物質である血液を貯蔵、補給する働きもある。つまり、肝は多くの栄養素やビタミンなどを蓄える臓器となる。 眼の乾燥、疲れ、視力が落ちるなどは、肝の血が不足するために引き起こされる症状だ。 肝は経絡を通じて眼とつながっているので、その病変は眼が赤い、目の奥が痛いなどの症状としても現れる。 以上のように、中医学でいう肝の概念は現代医学でいう肝臓より幅が広く、消化系・自律神経・視覚・血液系などをも含んでいる。
1.ウイルス性C型肝炎
肝機能障害の原因といえば、まず、肝炎ウイルスの感染である。 A型・B型・C型肝炎などのウイルスが経口感染や血液感染あるいは性行為感染で拡散する。 中医学ではこの肝炎ウイルスを「熱毒」という邪気のひとつとして呼んでいる。 従ってこのような急性肝炎障害に対しては、肝の熱を冷まし、解毒する事によって治療する。 慢性肝炎が肝硬変・肝ガンに移行することはよくみられるが、中医学ではこの肝細胞の繊維化は肝気の滞りや肝の血流の停滞に関連していると考えている。
2.アルコール性肝炎
次に、アルコールによる肝障害がある。 お酒を飲みすぎるとアルコール性肝障害なり、γ―GTPも高くなってくる。中医学ではアルコール性肝障害は肝経湿熱、肝経お血および肝腎陰虚などと考えている。
3.高脂血症による肝炎
最後に高脂血症による肝障害だが、生活が豊になり、コレステロールの摂取が増え、中性脂肪の高い人が多くなると、高脂血症による肝障害が多くなる。内臓肥満の主婦や、偏食のサラリーマンはすべて高脂血症肝障害の予備軍であろう。 中医学では、肝布脾不和や、お血痰湿などと考えている。 食事のバランスが崩れることで引き起こされる肝障害は、健康食品や自然の生薬で治していくのが良い。
● 肝機能を保護する生薬・食品・・・体質による肝機能保護 肝機能障害は体質の病理反応によって症状がいろいろある。 肝機能保護といっても、それぞれの人の体質に基づき、肝臓の状態に応じた健康食品・生薬・漢方処方を選択することこそ、良い効果を発揮することにつながる。 ここで臨床での肝機能障害時によく現れる症状を紹介する。 全体的には、脇腹の張り、痛み、全身の疲れ、消化不良、ため息、イライラなどの症状がある。 それぞれの特徴症状により、また、幾つかのタイプに分けられる。
肝臓熱毒タイプ 特徴:口が苦い、口の粘り、尿が黄色、眼の充血などである。このタイプはいわば肝炎の活動期である。美食家、酒をよく飲む人に多い。 対策:肝臓に熱毒があるので、肝熱を冷まし、解毒する。 生薬:板藍根(ばんらんこん) 漢方処方:復方益肝丸 板藍根(ばんらんこん)は熱を冷まし、解毒し、肝炎のウイルスを抑制する。 板藍根は中国ではとても人気のある生薬で、その注射液も作られている。 肝障害の実証・熱毒症に優れた効果を発揮する。 アルコールを多量に摂取すると、肝臓がダメージを受け、口が苦い、体が重いなどの症状が出る。この状態にもっとも適した処方は復方益肝丸で、余分な湿と熱を尿から体外に排出する。
肝鬱気滞タイプ 特徴:脇腹の張りと痛みには遊走性があり、ガスが多く、感情的な原因により症状が悪化する。 対策:ストレスをためないようにし、肝気のめぐりをよくする。 健康食品:ウコン(秋ウコン) 生薬:柴胡・香附子 漢方処方:逍遥丸・小柴胡湯 板藍根(ばんらんこん)は熱を冷まし、解毒し、肝炎のウイルスを抑制する。 ウコン・柴胡・香附子などは肝臓の気のめぐりを良くし。脇下の張りや痛みと不快感を解消する。 日本で有名な小柴胡湯は柴胡を主薬とする方剤で、肝障害を改善し、肝硬変の予防にも効果があるといわれている。ところがこの方剤には肝臓の陰血(体液、血液)を損なうという欠点がある。肝臓の水分を消耗する乾燥性があるからである。肝の陰血不足をチェックせずに長期間服用すると、陰血が消耗されてしまい、身体の疲れがひどくなり、口の乾き、眼のかすみ、肌が荒れるなどの症状が生じ、副作用につながる。 逍遥丸は小柴胡湯に当帰と芍薬を加えたような処方で、肝臓の陰血の補充と肝臓機能の活性化を兼ねる方剤と考えられている。従って、逍遥丸は長期間の服用でも、副作用を起こす心配がない。
肝お血タイプ 特徴:このタイプの特徴は慢性肝炎・脂肪肝による肝障害の慢性化で、肝細胞が繊維化し、それに血液の流れが停滞して、肝硬変に進展することが多いようである。中医学では肝のお血(血流停滞)によるものと考えられている。臨床では顔色が黒っぽい、胸のクモ状の毛細血管拡張、右脇下に針を刺すような痛み、眼が疲れやすい、さめ肌、倦怠感などの症状がある。肝ガンの多くも肝お血タイプに属する。 対策:肝血流を改善する。 健康食品:田七人参・蟻製剤 生薬:丹参・当帰・川_ 漢方処方:冠元顆粒(楽脈顆粒) 田七人参・丹参は肝血流を活性化し、肝細胞の繊維化を改善し、硬い肝組織を軟らかくする。 田七人参はお血を取り除きながら、血液の働きを良くし、肝機能を保護する特徴ある生薬である。丹参は肝血を養うとともに、肝のお血を取り除き、新陳代謝を活発にします。 丹参を主薬とする冠元顆粒(楽脈顆粒)は肝硬変を改善し、肝障害を回復させる。 最近では、蟻が中国では大変なブームとなっている。特にウイルス性肝炎による肝障害、肝炎キャリヤ、肝硬変に優れた効果がある。日本では蟻王精アンプルが輸入販売されている。
以上に述べたように、体質と肝臓の病理を合わせて考え、健康食品、生薬、漢方処方を選択することで、肝機能をより効果的に保護する事が出来るだろう。
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